新生児の低血糖
正期産の場合
新生児は生直後は高インスリン状態であり、生後1~2時間程度で抗インスリンホルモンが出てくる。
また、グリコーゲンの貯蔵が不足しているケースも多い。
すなわち、新生児は生後2時間程度までは低血糖気味なのが正常である。
しかし、血糖値が40mg/dlを下回ってくると低血糖と定義されるように、その時期に低血糖にならないように頻回に確認が必要。
生後30分で低血糖があればまずは母乳を飲ませる。
生後1時間で再検査し、まだ低いようである場合や、そもそも授乳が難しければ、
経静脈的にブドウ糖の補充(10%ブドウ糖液2ml/kgを緩徐に静注)が必要である。
単糖類であるブドウ糖は速やかに代謝され、再度低血糖になるため、
基本的には持続点滴を開始とする。
新生児の低血糖のリスクには
- 妊娠中のリトドリンの使用
- DM合併妊娠
- 新生児仮死
- small for date (SFD) など
一般小児の低血糖においても、
ブドウ糖など単糖類でのレスキューののち、食事など経口摂取できない状態では
すぐに血糖は下がってくると考えておく必要がある。
米などでんぷんは多糖類で緩徐に消化・代謝されるため、
それらを継続的に摂取できるかどうかが、点滴継続や入院加療の判断材料となる。
新生児の輸液管理
正期産の場合
日齢0
初期輸液は5%〜7.5%ブドウ糖液をWQ60(ml/kg/day)で開始する。
日齢0〜1では腎機能が未熟なため、Naフリーにしておかないと高Na血症になる。
- 日齢が1日進むごとにWQ+10ずつ上げていくイメージ
- 光線療法を開始した際は光線により不感蒸泄が増えるためWQ+10
- うっ血などがある際にはWQ-10
- 日齢1で尿が出てきたらNaをいれていく
- さらに尿が出てくる(腎機能が成熟する)ようなら、Kもいれていく
輸液管理に伴い、流速が変更になると血糖の入る速度が大幅に変わってしまうため、
頻回に血糖をチェックし、調整していく。
単位について
- 血糖はGIR (mg/kg/day)、水分はWQ (ml/kg/day) が汎用される。
新生児の気胸
新生児の肺は水っぽいため、気胸になっても成人のように虚脱してくることは多くない。
胸部レントゲン写真上は肺実質の間質にリークする形で認めることが多く、縦隔近くだと、縦隔陰影が鮮明化する。
新生児の頻呼吸などで心エコー評価の際に、なぜだか観察が難しく、レントゲンを見てみると気胸だったというパターンで築かれることもしばしば。
~新生児期の気胸~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
空気漏出症候群
新生児では肺がかたく、肺を膨らませるのに高い圧が必要です。約1%の頻度で自然に気胸が発生し、不穏状態、多呼吸、チアノーゼなどの症状を呈することがあります。胎便吸引症候群、呼吸窮迫症候群、新生児一過性多呼吸などの呼吸器疾患を有する児ではより高率に気胸を合併することがあります。人工呼吸管理や蘇生操作も気胸の原因となります。肺胞から漏れた空気は肺実質内に貯留し間質性肺気腫の原因となり、また気胸、気縦隔、心膜気腫、皮下気腫、気腹などの原因ともなります(空気漏出症候群)。
続発性気胸
気管支喘息や肺感染症(ブドウ球菌性肺炎、肺結核、百日咳など)、気道異物などを原因とし気胸が発生することがあります。特に、乳幼児期のブドウ球菌性肺炎は重症になりやすく、気胸や膿胸を合併しやすいことが知られています。
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【原因】
呼吸窮迫症候群(もっとも多い)
⇒肺サーファクタントが欠乏しているため、肺が膨らみにくい
⇒人工呼吸器管理していると、肺胞が破れやすい
胎便吸引症候群
⇒成熟した胎児が低酸素にさらされると、腸管の蠕動が活発となり、肛門括約筋もゆるむ
⇒胎便が排出され、呼吸をしたときに吸い込んでしまう
⇒空気がトラップされ、肺過膨張となる
あまり一般的ではないが、健康な新生児でも生じうる
⇒第一呼吸は、肺を膨らませるために強い陰圧の吸気が必要
女児より男児の方が頻度が高い
【症状】
- 気胸となった新生児のほとんどは症状がない
- チアノーゼ
- 多呼吸、鼻翼呼吸、呻吟呼吸
- 陥没呼吸、シーソー呼吸
- 興奮、不穏
【検査】
- 聴診で気胸と判断するのは困難
⇒体が小さいので、心音や正常な肺音を聴取してしまう
- 胸部レントゲン
- 光ファイバーで透光性があるかどうかを見る
【治療】
- 無症状であれば、経過観察でOK
- 呼吸状態、心拍数、酸素飽和度、皮膚の色を観察する
- 症状があるときは、胸腔ドレーンを挿入する
- 数日~数週間でよくなる
- 緊張性気胸となることもあるので、注意が必要である
基本的な輸液の考え方
まずは必要な水分量
成人はざっくり、
- 尿量 ・・・20ml/kg/day
- 不感蒸泄・・・15ml/kg/day
- 代謝水 ・・・5ml/kg/day
つまり1日の維持液は
尿量 + 不感蒸泄 - 代謝水 = 20ml/kg/day + 15ml/kg/day - 5ml/kg/day = 30ml/kg/day
ex. ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
70kgの成人は1日の必要な水分量は 70kg × 30ml/kg/day = 2100ml ≒ 2L
つまり点滴は500ml/1本を4本回しにする ⇨ 2000ml ÷ 24hr = 83.333ml ≒ 80ml/hr
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そして、
3号液が維持液と言われるのは、1日に必要な主な電解質が満たされる組成だから
体の中の主な電解質は Na, K, Cl のこと
NaとClの必要量はだいたい100mEq/day
Kの必要量はだいたい50mEq/day
cf.~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
Naは1g = 17mEq つまり、100mEqはだいたい6gくらい。
高血圧の減塩指導が6gなのはNaの1日の必要量がその程度であり、
基本的には塩分として接種するため。
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小児の維持液
水分量は下記の式で計算する。
0~10kg 体重×100ml/kg/day ・・・①
10~20kg (体重-10)×50ml/kg/day+①の10kg分・・・②
20~30kg (体重-20)×20ml/kg/day+②の20kg分
ex.
- 8kgの小児では 8kg×100ml/kg/day=800ml/day なので1日の維持量は800ml
- 15kgの小児では
(15kg-10kg)×50ml/kg/day+10kg×100ml/kg/day=1250ml/day
主要な電解質(Na,K)の必要量は基本的には成人と同じくらいと考えて良い。
⇨3号液くらいがちょうど良い。
具合の悪い小児で、腎機能の悪化が懸念される場合(急性腎不全など)
Kフリーの組成が望ましい場合もある。
そうすると、3号液からKを除いた製剤=4号液の出番があるかもしれない。
また、
基本的には具合が悪い小児はNaが低くなる病態が多い。
- 経口摂取不良による脱水+Na低値(低張性〜等張性脱水・・・Na欠乏性脱水)
- SIADH
*肺にはADH受容体があり、肺炎や喘息でSIADHになることがある
*脳浮腫や髄膜炎など脳圧が亢進する状況でもADH分泌によるSIADHがありうる
つまり、救急外来などでは維持液の組成よりNaは多めが良いかもしれない。
そうすると2号液も選択肢に入ってくる余地がある。
ここで、一度、輸液の歴史を振り返ると~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
最も古くからある輸液製剤
- 生理食塩水
- 5%ブドウ糖液
生理食塩水はざっくり Na140mEq/l + Cl 140mEq/l であり、細胞外液と言われる。
Naは維持量よりも多いため、こればかりだと医原性に高Na血症になる。
生理食塩水で70kgの成人の必要水分量約2000mlを補うとNaは280mEq入ってしまう。
逆に5%ブドウ糖液は細胞の内外に満遍なく広がり、NaもClもKも入っていない。
ちなみに5%のブドウ糖は浸透圧を血液とそろえるために入っており、体内では速やかに代謝され、水とCO2になる。
NaとClをちょうど良くするにはとりあえず、
生理食塩水と5%ブドウ糖液を半分ずつ混ぜれば良いと考え、できたのが1号液
つまり、Na 70mEq/l + Cl 70mEq/l くらいの製剤である。
しかしこれでも、維持液とするには足りない電解質 = K がある。
これを必要な分、1号液に付加しているのが2号液
ただ、2号液でもそれだけで必要な水分量を補うと
70kgの成人でNa 140mEq/day になるのでやはり多くなってしまう。
そこでさらにNaを調整した製剤が3号液
このため3号液が維持液のスタンダードとなっている。
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小児がどの程度、経口接種できるのか、を加味して
維持液を100%点滴で補うのか・・・100% maintenance
80%で良いのか ・・・80% maintenance
を考えていく。
開始液として、維持液に先立って、10ml/kg/hrを2時間行うこともある。
BCG コッホ現象
BCGは主に乳幼児の結核、特に結核性髄膜炎を予防するために行われている、予防接種の1つ。
接種対象は生後1歳までの乳児で、生後5〜8ヶ月で行われることが多い。
コッホ現象とは、BCGワクチン接種した際にすでに結核や非結核性抗酸菌症に罹患していた際に出現する。
大阪保健所の作成したマニュアルがネットで公開されており、カラー写真付きでわかりやすい。
一般にBCG接種後、針を刺した部位は翌日には赤みが引いてしまい、1ヶ月程度たってから再度、発赤し、硬結など触れるようになる。
コッホ現象は接種後に発赤が収まることなく、硬結を触れたり、膿疱になったりする現象を指す。Grade分類されており、概ねGrade3を超えてる所見がある際には”本物”のコッホ現象としてツ反やIGRAなどの検査に進む。
小児 体重増加不良
正常な子供の発育にはある程度目安が存在し、そこから著しく外れるものには正しく介入することで、重大な疾患の早期発見や合併症の予防が期待される。
小児の体重増加不良は産後すぐに産院で気がつかれたり、乳幼児健診で気づかれることが多い。多くは哺乳や食事接種の指導で改善することが多い。
生後、産院に入院しているおよそ1週間ほどの間には、新生児の体重は日齢1、2日目では生理的に減少する。その後は生後3ヶ月ほどまではおよそ30g/日程度ずつ増加していく。平均して3000gで出生すると、3ヶ月頃には倍の6kgまで体重が増えていることが一つの目安である。
生後すぐ、産院にいる間の体重増加不良の原因には母乳の与え方、母乳不足、児の嘔吐(胃軸捻転の長軸タイプは新生児には生理的に存在することが多い;胃軸捻転 — 日本小児外科学会)などがある。助産師による指導やミルクの追加、体位などの工夫で改善する場合が多いので、それらを観察し、必要に応じて介入していく必要がある。
それらの介入でも改善が無い際、体重が増えない、むしろ減少が続く際には小児科医の診察が考慮される。
胃軸捻転の長軸タイプなどは授乳後の体位変換(縦抱きや右側臥位)で改善されることも多く、成長に伴い座位や立位を取れるようになってくると改善してくる。腸に便やガスが溜まっていると胃の捻転も強くなることがあるので、肛門刺激や浣腸で排泄(胎便も含め)を促すことも有用である。
胃軸捻転と違い、腸回転異常症に続発する中腸軸捻転;腸回転異常症 — 日本小児外科学会は 緊急オペの適応になることが多く、手術後にも短腸症候群など重篤な後遺症を残す危険があるため、疑われれば緊急での対応が必須です。
多くは生後1ヶ月以内に捻転が起こり、激しい症状(胆汁性の嘔吐、腹痛、ショック)がおきますが、稀に年長児の腹痛や間欠的な嘔吐で初めて診断されることもあるため、そのような症状の小児を見た際には腹部レントゲンで右側腹部のgas less像がないか、十二指腸横行部が正常かを確認する必要があります。
4ヶ月検診などで引っかかってくる際には口腔過敏など児の素因も考慮される。
必要なら入院で授乳や栄養指導、ゲップなどの出させ方を指導すると良い。
治療が必要な疾患が隠れている可能性や、発達障害の初期症状の可能性も考慮されるので小児科医のフォローアップを検討する。
ミルクをどのくらい飲めれば良いのか~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
新生児、乳幼児は体重を維持するために100kcal/kg/day必要とされる。
そこから逆算してどの程度ミルクを1日で飲めていれば良いのか考えていく。
母乳が100mlで65kcal
市販のミルクもだいたいその程度なので、
15kgの小児の場合、1日に最低必要なカロリーは15kg × 100kcal/kg/day = 1500kcal/day
それをミルクで補うと、2300ml/day程度はミルクが飲めないと成り立たない。
1日6回の授乳だとすると、1回の授乳あたり、400ml程度が必要となる。
*実際には15kgの小児は離乳食が始まっているのでミルクで全て補う必要はない。
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