産婦人科ノート

駆け出し産婦人科医の忘備録です。覚書程度、実臨床では正式なデータを参照してください。

小児の維持液

水分量は下記の式で計算する。

0~10kg   体重×100ml/kg/day          ・・・①

10~20kg   (体重-10)×50ml/kg/day+①の10kg分・・・②

20~30kg   (体重-20)×20ml/kg/day+②の20kg分

 

ex.

  • 8kgの小児では 8kg×100ml/kg/day=800ml/day なので1日の維持量は800ml

 

  • 15kgの小児では 

             (15kg-10kg)×50ml/kg/day+10kg×100ml/kg/day=1250ml/day

 

主要な電解質(Na,K)の必要量は基本的には成人と同じくらいと考えて良い。

                      ⇨3号液くらいがちょうど良い。

 

 

 

 

具合の悪い小児で、腎機能の悪化が懸念される場合(急性腎不全など)

Kフリーの組成が望ましい場合もある。

そうすると、号液からKを除いた製剤=4号液の出番があるかもしれない。

 

 

また、

基本的には具合が悪い小児はNaが低くなる病態が多い。

  • 経口摂取不良による脱水+Na低値(低張性〜等張性脱水・・・Na欠乏性脱水)
  • SIADH

   *肺にはADH受容体があり、肺炎や喘息でSIADHになることがある

   *脳浮腫や髄膜炎など脳圧が亢進する状況でもADH分泌によるSIADHがありうる

 

つまり、救急外来などでは維持液の組成よりNaは多めが良いかもしれない。

そうすると2号液も選択肢に入ってくる余地がある

 

 

ここで、一度、輸液の歴史を振り返ると~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

最も古くからある輸液製剤

 

生理食塩水はざっくり Na140mEq/l + Cl 140mEq/l であり、細胞外液と言われる。

Naは維持量よりも多いため、こればかりだと医原性に高Na血症になる。

       生理食塩水で70kgの成人の必要水分量約2000mlを補うとNaは280mEq入ってしまう。

 

 

 

逆に5%ブドウ糖は細胞の内外に満遍なく広がり、NaもClもKも入っていない

 

ちなみに5%のブドウ糖は浸透圧を血液とそろえるために入っており、体内では速やかに代謝され、水とCO2になる。

 

 

NaとClをちょうど良くするにはとりあえず、

生理食塩水と5%ブドウ糖液を半分ずつ混ぜれば良いと考え、できたのが1号液

つまり、Na 70mEq/l + Cl 70mEq/l くらいの製剤である。

 

しかしこれでも、維持液とするには足りない電解質 = K がある。

これを必要な分、1号液に付加しているのが2号液

 

 

ただ、2号液でもそれだけで必要な水分量を補うと

70kgの成人でNa 140mEq/day になるのでやはり多くなってしまう。

そこでさらにNaを調整した製剤が3号液

 

このため3号液が維持液のスタンダードとなっている。

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小児がどの程度、経口接種できるのか、を加味して

 

維持液を100%点滴で補うのか・・・100% maintenance

      80%で良いのか  ・・・80% maintenance

 

を考えていく。

 

開始液として、維持液に先立って、10ml/kg/hrを2時間行うこともある。